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アミノフィリン静注追加投与について

文献紹介

111号 2002年1月

急性喘息に対するβ2刺激剤投与後のアミノフィリン静注追加投与について

「Addition of intravenous aminophylline to β2-agonists in adults with acute asthma」
~Cochrane Library 2000 issue 4~

  現在、急性喘息発作に対してアミノフィリン静注は比較的多く使用されている。しかし、昨年11月にコクラン共同体より「成人の急性喘息に対してβ2刺激剤の追加目的に使用するアミノフィリン静注は、プラセボと比較して肺機能の改善及び入院の予防の効果において、統計学的、臨床的に有意な差はない」とのレビューが発表されたので、ここでその内容について紹介する。

  このシステマティックレビューは1979年から1994年までに出版された、COPD (慢性閉塞性肺疾患)患者での試験を除く15のランダム化比較試験を用いて行われている。

  第一次エンドポイントをPEFR(最大呼気流量)とFEV1(1秒量)とし、第二次エンドポイントとして入院、バイタルサイン(脈拍、呼吸回数、血圧)上の効果、副反応の存在(振戦、動悸・不整脈、嘔吐といった副作用を含む)をあげている。
  第一次エンドポイントのPEFR、FEV1は、投与開始時、投与30分後、60分後、12時間後、24時間後の時点で評価している。

  結果は、第一次エンドポイントのどの時点においても呼吸機能の改善についてアミノフィリンはプラセボと比較して有意な差は示されなかった

(PEFR(Lpm):開始時WMD8.782[-3.326~20.890]、30分後9.102[-9.256~27.460]、60分後-0.96[-19.542~17.620]、12時間後-0.8303[-37.295~20.688]、24時間後-22.200[-101.053~56.654] / FEV1(L):0.104[0.017~0.191]、0.260[0.029~0.491]、0.017[-0.105~0.139]、-0.410[-0.983~0.163]、-0.420[0.969~0.129])。

  12時間後、24時間後においてはわずかにアミノフィリンの方が改善傾向にあり、遅効性の気管支拡張作用または気道弛緩の有益性をもつ可能性が示唆されているが、これはいずれも有意差はなく臨床的に意味を持つものとは考えにくい。
  第二次エンドポイントの入院については、オッズ比0.57[95%CI 0.32~1.02]で入院を43%減少させる可能性があるが、これもプラセボとの有意差は出ていない。

  副作用については、プラセボと比較してアミノフィリンでは動悸・不整脈の発現はオッズ比2.9[95%CI 1.5~5.7]と約3倍、嘔吐ではオッズ比4.2[95%CI 2.4~7.4]と約4倍に発現の危険性が高くなっている。
  これはつまり、アミノフィリンでの治療をすると6人に1人が動悸・不整脈を起こし(NNH=6)、4人に1人が嘔吐を発現する(NNH=4)ということになる。
  その他の副作用については、振戦がオッズ比1.53[95%CI 0.89~2.62]という結果となっている。

  今回のレビューにはいくつかの問題点もある。まず、呼吸機能評価が全て規模の小さいサブグループ解析のため有意差が出にくい傾向にある。

  また、第一次エンドポイントのPEFR、FEV1が急性喘息の症状評価として有効か (症状改善の度合いを正しく反映しているか)もいまいち不明瞭である。そして出版バイアスや選択バイアスの存在も否定できない。

  しかし、以上の条件を考えてもこのレビューの結果からは、β2刺激剤及びステロイド剤を適正に投与されていても症状が改善されない急性喘息患者へのみアミノフィリン静注を選択するものと考えるのが妥当であり、ルーチンにアミノフィリン注が投与されるのは副作用発現を防ぐためにも避けるべきである。