119号 2002年11月

服用量を守りましょう。
正露丸等クレオソート製剤は、一般用医薬品の承認基準ができる以前の日露戦争の頃から使用されてきた薬です。一般用医薬品として承認され、今日に至っています。しかし、有効性と安全性に疑問を投げかける報告がされるようになりました。
@細胞傷害 A強い腐食性〔解毒薬がない〕 B発がん性
| @ |
クレオソートには、高濃度で細胞内のタンパク質を変性させる作用があることが知られています。したがって、クレオソートは消化管内で高濃度になると、フェノール系化合物の局所刺激作用により細胞を広範囲に傷害し、潰瘍が作られる可能性があります。 |
| A |
フェノール、クレゾールは、以前は薄めて手指の外用消毒薬として使用されていましたが、現在はその毒性と刺激性のため、人体に対してはほとんど使用されていません。 |
| B |
1959年にマウスの背中にクレオソートの主成分であるフェノール及びフェノール |
正露丸を飲んで腹痛や下痢が止まるのは、腸管の神経を麻痺させて、細胞を壊死させることによると考えられます。
<1>ウサギの空腸からの腸液の分泌量を抑制する量は、マウスの半数致死量より高濃度です。
<2>ラットの実験で腸の蠕動を抑制する量は、ラットの亜急性毒性試験、慢性毒性試験での中毒量とほぼ同じです。
<3>ラット、ブタの小腸平滑筋の収縮を抑制する量は、マウスの半数致死量の5〜8分の1程度です。
したがって、<1><2> <3>から、クレオソートは、これらの腸管に対する作用が発現する量と中毒量との差が少ないことがわかります。
動物実験のデータから正露丸のヒトでの中毒量を推定すると、常用量の2〜4倍以内と
なるという報告があり、中毒量と常用量に大きな差がありません。
@実際に、常用量の約4倍を1週間服用し、腸管壊死をおこし腸管切除を受けた症例が報告されています。
(荒木京二郎他, 臨床消化器内科 9:741-745,1994症例報告)。
A厚生労働省 医薬品医療用具安全情報165号(2001年3月)から
今般,本剤の服用に伴う肝機能障害が3件報告されたことから,「使用上の注意」の改訂を行うこととした。報告された3件とも,入院処置により回復した。
| ★安全対策 | 本剤による肝機能障害の発現機序は明らかではないが,いずれの症例も本剤の薬剤リンパ球刺激試験(DLST)が陽性であることから,「まれに起こることがある重篤な症状」として「肝機能障害」を追記し,注意喚起を図った。 本剤服用中に全身のだるさ,黄疸等があらわれた場合には,直ちに服用を中止し,医師の診察を受ける必要がある。 |
正露丸の適応となる急性胃腸炎、感冒性胃腸炎、単純性下痢などは正常な生体の防御反応ですので、下痢止め薬を用いなくてもたいていは自然に治ります。
ところが、正露丸の臨床試験は、正露丸を投与した人だけを対象に評価していて、正露丸を投与しないグループとの比較をしていません。したがって、有効性の証明にはなっていません。
服薬指導していると「正露丸を飲んでも下痢が止まらなかったので来院しました」と話されたり、服用量を聞くと適当に飲んでいる方がおられました。
患者インタビューで正露丸を使用していること分かった場合には、服用量を必ず守るように指導することが重要です。〔15才以上1回3粒、1日3回服用〕
<資料> 浜六郎「正露丸の安全性(危険性)について」正しい薬と治療の情報T. I. P.(The Informed Prescriber)14:99-106,1999。 2000年 薬害オンブズパースン。厚生労働省医薬品医療用具安全情報165号2001年。全日本民医連くすりの話01年9月号。